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下書き(最終更新 2026.08.20)
障がい福祉サービスの市場は、この10年で大きく拡大してきました。関連予算は15年で約3倍に増え、市場規模は2024年度に約1兆7,732億円(事業者売上高ベース)と予測されています。就労支援での開業を検討する方にとっては追い風に見える数字です。
ただ、「市場が伸びている=どこで開業しても伸びる」ではありません。障がい福祉サービスを10年以上運営してきた立場から、市場の実像と、開業前に本当に見るべきポイントを整理します。
ひとことで言うと 障がい福祉の市場は年1兆7,700億円。10年で大きく伸びました。
民間調査(矢野経済研究所)によると、障がい者自立支援サービスの市場規模は2023年度が前年度比10.2%増の約1兆6,192億円、2024年度は前年度比9.5%増の約1兆7,732億円と予測されています。障がい福祉サービス関連予算はこの15年でおよそ3倍に増加しました。
背景には、福祉サービスを利用する方の増加があります。とくに精神障がいのある方は増え、近年600万人を突破したとされます。制度の充実と、障がいへの社会的な認知の広がりが、利用者数と事業所数の増加を後押ししてきました。

ひとことで言うと 制度が整い、支援を必要とする方が増え、新しい働き方が生まれたためです。
①制度の充実:障害者総合支援法のもとで、就労継続支援・児童発達支援・グループホームなど多様なサービスが整備され、公費(給付費(国や自治体から事業所に支払われるお金))で支えられています。
②対象となる方の増加:発達障がいや精神障がいの認知が進み、支援につながる方が増えています。児童発達支援・放課後等デイサービスは、発達障がいのあるお子さんの増加で利用が伸びています。
③働き方の多様化:農園・サテライトオフィス型の雇用支援など、新しいモデルが高い伸び率で広がっています。「障がい×◯◯」の掛け合わせで、これまでになかった選択肢が生まれています。
同じ想いで、地域に新しい福祉の選択肢を
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ひとことで言うと 売上のほとんどは公費。だから自分で値段を決められません。
市場を語るとき、よく2つの数字が混ざって使われます。ひとつは民間調査による市場規模(事業者の売上高ベースの推計)、もうひとつは国の障がい福祉サービス等関係予算です。前者は事業者が受け取った収入の合計、後者は国が確保した公費の枠であり、意味が違います。
そのうえで、この2つには共通する構造があります。障がい福祉サービスの売上は、そのほとんどが公費(給付費)で支えられているという点です。利用者の自己負担は原則1割で、しかも所得に応じた月額上限が設けられているため、多くの方は負担ゼロか少額です。
ここから、一般的なビジネスとは決定的に違う性質が生まれます。値付けを自分で決められない市場だということです。単価(報酬)は国が定める公定価格(国が決めた値段)で、事業所が「うちは質が高いので倍の値段にします」とはできません。価格競争が起きにくい安定した市場である一方、売上を伸ばす手段は「利用者数を増やす」「加算を積む」「工賃を上げて報酬区分を上げる」に限られる(収益の構造は就労継続支援B型のフランチャイズは儲かる?で詳しく解説しています)ということです。市場規模の数字を見るときは、この前提をセットで押さえてください。
ひとことで言うと どのサービスを選ぶかで、人員もお金の入り方も変わります。
「障がい福祉サービス」とひとくくりにされますが、種別ごとに規模も伸び方も、開業のハードルもまったく違います。代表的な種別を整理すると次のとおりです(事業所数・利用者数は公表統計にもとづくおおよその規模感です)。
| サービス種別 | 規模の目安 | 動向と開業のポイント |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 約1万8千事業所/約37万人(令和6年9月時点) | 障がい福祉サービスのなかで利用者数が最も多い部類。営利法人の参入が活発。総量規制(その地域にすでに事業所が足りていると自治体が判断すると、新しく開けなくなる仕組み)の対象で、平均工賃月額が基本報酬に直結する。 |
| 就労継続支援A型 | 約4,300事業所/約8.5万人 | 雇用契約を結ぶため最低賃金の支払い義務がある。基準の厳格化を受けて近年は微減。収支率要件(生産活動収入から経費を引いた額が賃金総額以上)が重い。 |
| 児童発達支援・放課後等デイサービス | 各約2万か所/各約30万人 | 発達障がいの認知の広がりで需要が伸びた分野。営利法人が約8割。令和6年度改定で支援プログラムの公表が義務化された。 |
| 生活介護 | 約1万3千か所/約30万人 | 障害支援区分3以上(50歳以上は区分2以上)が対象で、区分5・6の方が7割。支援度が高く、人員体制と設備の負担が大きい。総量規制の対象。 |
| 共同生活援助(グループホーム) | 約15万人 | 地域移行(施設や病院ではなく、地域で暮らせるようにしていくこと)の受け皿として拡大が続く分野。現時点では総量規制の対象外だが、対象化の議論が続いている。 |
| 相談支援 | 計画相談・障害児相談 | サービス等利用計画を作る地域の要。相談支援専門員の不足が全国的な課題で、単独での収益化は難しい一方、地域連携の中心になれる。 |
この表からわかるのは、「市場が伸びている」は種別ごとの話でしかないということです。どの種別で開業するかを決めた時点で、収益構造も、必要な人員も、指定のハードルも決まります。市場動向を見る前に、まず種別を選ぶ順番だと考えてください。
ひとことで言うと 全国が伸びても、あなたの町で伸びるとは限りません。
ここが最も大切な点です。全国の市場規模が拡大していても、あなたが開業する地域・種別で伸びるかは別の話です。見るべきは「日本全体の1.77兆円」ではなく、次の3つです。
1. 自分の地域・種別の需給:同じ市町村に同種のサービスが飽和していれば、市場が伸びていても利用者は集まりません。
2. 総量規制:就労継続支援などは、自治体が地域の必要量を超えると判断すれば新規の指定を受けられないことがあります(2024年4月からは市町村意見申出制度も)。「良い物件があるのに指定が下りない」地域も実在します。
3. 人材(とくにサービス管理責任者):市場がいくら伸びても、要件を満たすサビ管を確保できなければ事業所は開けません。ここが開業の最大のボトルネックです。
ひとことで言うと 売上は「人数 × 単価 + 加算」。入金は約45日後です。
障がい福祉サービスの収益は、利用者が事業所を利用した実績に対して支払われる給付費(基本報酬+各種加算)が土台です。市場が伸びていても、収益は「利用者数×単位数×地域単価+加算」で決まります。
たとえば就労継続支援B型の基本報酬は、令和6年度改定で定員20人以下・人員配置7.5対1の場合、平均工賃月額に応じて1日あたり537単位から748単位までの8段階に分かれていました(令和6年度改定時の例)。1単位は原則10円で、地域区分による上乗せがあります。給付費の入金はサービス提供の約45日後になるため、運転資金の確保も欠かせません。
【令和8年6月からの区分の見直し】この区分の基準は令和8年6月の算定分から見直されています。令和6年度改定で平均工賃月額の算定方法が変わり全国的に区分が上がったことを受けた調整で、区分(一)〜(六)の基準額がそれぞれ3,000円引き上げられました(区分(一)=月額4万5千円以上 →4万8千円以上)。あわせて区分の間に中間区分(A)〜(F)が新設され、基準額の引き上げで区分が一段下がる場合も報酬が急に落ち込まないよう緩和されます。平均工賃月額が1万5千円未満の区分(七)(八)(九)は据え置きです。ただし、すべての事業所が対象ではありません。令和5年4月以前に指定を受けた事業所で、令和6年3月から令和6年4月にかけて基本報酬区分が変わらなかった・下がった場合などは対象外となり、従来の区分(「R8改定対象外」)が適用されます。自事業所がどちらに当たるかは、厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定」の資料と、指定を受ける自治体の要領で必ずご確認ください。
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ひとことで言うと 令和8年6月以降に新しく開く事業所は、報酬が約1.6%下がりました。
これから開業する方に直接ひびく変更なので、先にお伝えします。令和8年6月から、新しく指定を受けた事業所に限って、国から入るお金(基本報酬)が少し低く設定されることになりました。すでに運営している事業所はこれまでどおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 就労継続支援B型/グループホーム(介護サービス包括型・日中サービス支援型)/児童発達支援/放課後等デイサービス |
| いつから | 令和8年6月1日以降に新しく指定を受けた事業所(既存の事業所は対象外) |
| どれくらい | 就労継続支援B型の場合、基本報酬が1000分の984(=およそ1.6%の引き下げ) |
| いつまで | 次の報酬改定(令和9年度)まで |
理由は、これらのサービスで事業所の数が急に増えており、制度を長く続けるために調整が必要になったためです。重い障がいのある方を受け入れる場合や、離島・中山間地域、自治体が「必要だ」と判断して設置する事業所などは、これまでどおりの単価が使えます。
開業を検討する方は、収支計画を1.6%低い前提で作っておくと安全です。詳しくは厚生労働省の改定資料をご確認ください。
ひとことで言うと 国の方針は「数を増やす」から「中身を良くする」へ移っています。

市場が伸びているという話だけを見ていると、見落とすものがあります。拡大と同時に、制度は「量を増やす」から「質を問う」へ軸足を移しているという事実です。ここが、これから参入する方にとって最も重要な論点だと考えています。
1. 報酬は3年ごとに改定される
障がい福祉サービスの報酬は原則3年ごとに見直されます。令和6年度の改定では、就労継続支援B型の基本報酬の人員配置区分が見直され、6対1・7.5対1・10対1の3区分になりました(6対1は同改定での新設です)。つまり、開業時に立てた収支計画の前提は、3年ごとに動く可能性があるということです。
2. 基準を満たさない事業所は淘汰される方向にある
就労継続支援A型では、2017年に事業所の閉鎖が相次ぎ、2018年度には2,272人が解雇される事態が起きました。これを受けて、直近2年の実績が赤字の法人は新規指定を受けにくくなるなどの厳格化が進み、給付費を利用者の賃金に充てることも認められていません。「制度に乗れば安泰」という時代ではないことを示す出来事です。
3. 支援内容の公表が求められる
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、令和6年度改定で支援プログラムの公表が義務づけられました。何をどう支援しているかを外部に示せない事業所は、報酬上も不利になります。
4. 次期計画も「質」が中心テーマ
障害福祉計画(自治体が3年ごとに作る、必要なサービス量の計画)は、量的な整備目標から支援の質・地域生活の実現へと重心を移してきています。これから参入するということは、伸びている市場に乗ることではなく、質で選ばれ続けなければ残れない市場に入ることだと理解しておく必要があります。
ひとことで言うと 2025年10月から、本人が働き方を選ぶための新しい入口ができました。
就労支援での開業を考えるなら、必ず押さえておきたい新しい動きが就労選択支援です。令和4年の法改正で創設され、2025年10月に施行されました。
これは、本人の就労能力や適性を客観的に評価(アセスメント)し、一般就労・就労移行支援・就労継続支援A型/B型のうち、どの進路が本人にとって適切かを本人と支援者が一緒に選べるようにする入口のサービスです。原則として、就労継続支援B型などを利用する前に利用することが想定されています。
これまでは、利用が始まってから、その事業所がアセスメント(本人の希望や得意・不得意をていねいに聞き取って整理すること)を行うのが一般的でした。他の選択肢と比較する機会が乏しいという課題があったためです。事業者側から見れば、「近いから」「空いているから」で利用者が決まる時代が終わり、支援の中身と実績で選ばれる度合いが強まるということです。開業を検討する段階から、自分の事業所が何を提供できるのかを言葉にしておく必要があります。
ひとことで言うと 全国の数字より、この5つを順に確認するほうが大事です。

全国の市場規模を調べることより、はるかに開業の成否を左右するのが次の5つです。順番にも意味があります。
制度と社会的ニーズを背景に拡大基調が続くとみられます。ただし地域・種別による差は大きく、全国の数字がそのまま自分の事業所に当てはまるわけではありません。
可能です。ただし指定申請・人員基準・給付費請求など制度事業ならではの実務が多く、フランチャイズで型を借りて立ち上げるという選択肢もあります。
「狙い目」は地域と自社の強みで変わります。就労継続支援B型、児童発達支援・放課後等デイ、農福連携など、それぞれに需要と要件があります。
市場の拡大と個々の事業所の収支は別だからです。撤退の多くは需要不足ではなく、稼働率が上がらない、人員基準を維持できない、運転資金が尽きるといった運営面の理由で起きます。
都道府県・市町村が定める障害福祉計画と、候補地の障がい福祉担当課への事前相談で確認します。同じ都道府県内でも市町村によって状況が変わるため、必ず開業予定地の窓口で確認してください。
地域や種別、定員によって差が大きく、一律には言えません。ただ、開業初月から定員が埋まることはまずないという前提と、給付費の入金が約45日後になるという前提の2つは共通します。資金計画はこの2点を織り込んで立ててください。
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障がい福祉サービスの市場は約1.77兆円まで拡大し、今後も伸びが見込まれます。しかし開業の成否を決めるのは全国の市場規模ではなく、自分の地域・種別の需給、総量規制、サビ管の確保、運転資金という足元の条件です。
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