保護犬・保護猫×就労支援で開業するには? 動物福祉という新しい選択肢

2026.06.22

「保護犬・保護猫を救う活動を、きちんと"続けられる事業"にしたい」「障がいのある方が安心して働ける場所をつくりたい」——そんな想いから、保護犬・保護猫×就労継続支援B型での開業を考える方が増えています。これは、動物福祉障がい者就労というふたつの社会課題を、ひとつの事業で同時に解決していく新しいモデルです。

この記事では、事業の仕組みから、就労継続支援B型の基礎、開業の流れ、必要な資金、収益モデル、利用者の集め方、失敗を避けるポイント、よくある質問まで、はじめて検討する方が知りたいことを一通り網羅して解説します。報酬の細かな計算は報酬の仕組み、ブランド選びはFCの選び方、費用の内訳は開業の流れと費用の記事で、それぞれさらに詳しく取り上げています。

いま、保護犬・保護猫が置かれている現実

保護犬・保護猫の保護施設のイメージ

日本では毎年、多くの犬や猫が行き場を失っています。環境省の統計によると、令和6年度(2024年度)に自治体が引き取った犬猫は約3万9千頭、そのうち殺処分されたのは約6,800頭でした。動物愛護法の改正やマイクロチップ装着の義務化、各地での譲渡活動の広がりによって、殺処分数はこの10年あまりで大きく減ってきました。それでもなお、「もう少し支える仕組みがあれば助けられた命」が残されているのが現状です。

背景には、安易な飼育放棄、多頭飼育崩壊、高齢の飼い主がやむなく手放すケースなど、さまざまな事情があります。保護団体やボランティアの努力で救われる命がある一方で、保護活動そのものを継続的に支える「お金」と「人手」が慢性的に不足しているという構造的な課題があります。エサ代・医療費・施設の維持費はかさみ、世話をする人手も足りない。善意やボランティアだけに頼っていては、活動はどうしても長続きしにくいのです。

その一方で、ペット関連の市場規模は約1.5兆円とされ、家族の一員としてペットを大切にする文化は年々広がっています。「救いたい命」と「ペットを愛する社会」。この両方があるからこそ、保護活動を"持続可能な事業"に変える余地が生まれています。

もうひとつの課題:障がいのある方の「働きたい」

国内には900万人を超える障がいのある方がいるとされ、その多くが「働きたい」「誰かの役に立ちたい」「社会とつながりたい」という想いを持っています。しかし一般企業での就労にはハードルがあり、体調や特性に合わせて無理なく働ける場は、まだ十分とはいえません。

就労継続支援B型を利用する方は年々増えていますが、平均工賃(利用者が受け取る賃金)は月額で1万数千円ほどにとどまるのが実情で、国も「工賃をいかに引き上げるか」を重要なテーマに掲げています。つまり、利用者にやりがいのある仕事を用意し、工賃を高めていける事業所が、これからますます求められているのです。

「保護活動の担い手とお金が足りない」「障がいのある方の働く場が足りない」。この別々に見えるふたつの課題を、同時に解決できるのが、保護犬・保護猫×就労継続支援B型というモデルです。

そもそも「就労継続支援B型」とは

就労継続支援B型は、障害者総合支援法にもとづく障がい福祉サービスのひとつです。一般企業で働くことが難しい方に、雇用契約を結ばずに、体調や特性に合わせて自分のペースで生産活動(仕事)に取り組む機会を提供します。働いた対価として支払われるのは給与ではなく「工賃」で、ここが最低賃金が適用されるA型との大きな違いです。

利用できるのは、障害者手帳をお持ちの方や、医師の意見書などで支援の必要性が認められた方などです。利用にあたっては、お住まいの自治体に申請し、サービスの支給決定(受給者証の交付)を受けます。下の表で、よく似た3つのサービスを整理します。

種別雇用契約主な対象・特徴
就労継続支援B型なし(工賃)自分のペースで働きたい方。対象の幅が広い
就労継続支援A型あり(最低賃金以上)一定の勤務ができ、安定した収入を得たい方
就労移行支援なし(訓練)一般就労を目指す方の訓練(原則2年)

B型は「まずは社会に参加したい」「無理なく働きたい」という方に向いており、事業所の収入の土台は、利用に対して国や自治体から支払われる給付費(公費)です。景気に左右されにくく社会的意義も大きいことが、参入が広がる理由です。A型とB型の詳しい違いはこちらの記事でも解説しています。

「保護動物」と「就労支援」を掛け合わせる意義

保護猫とのふれあいのイメージ

保護犬・保護猫の世話は、利用者にとって"意味を実感できる仕事"です。自分が世話をした犬や猫が元気を取り戻し、新しい家族のもとへ巣立っていく——その手応えは、大きなやりがいと自己肯定感につながります。動物とのふれあいには、心を落ち着かせ、人と人とのコミュニケーションを自然に促す効果(アニマルセラピー的な効果)も期待され、利用者が事業所に通い続ける動機にもなります。

仕事の内容も幅広く、エサやりや清掃、ブラッシングといった基礎的な世話から、トリミングやしつけ(トレーニング)、里親とのマッチング、オリジナルグッズやフードづくりまで段階的に広げられます。「できること」が少しずつ増えていく実感が、利用者の成長と工賃の向上を後押しします。

事業者にとっても、「保護犬・保護猫を救う」という明確な社会貢献のストーリーは、利用者・スタッフ・地域・支援機関からの共感を得やすく、集客や採用、里親募集や寄付の面でも追い風になります。動物福祉と障がい者就労、ふたつの社会課題に同時に取り組むことが、そのまま事業の差別化と強みになるのです。

事業の収益はどう生まれるのか

この事業の収益は、大きく「給付収入」と「事業収入」の2本立てです。

①給付収入(土台)…就労継続支援B型としての報酬で、「基本報酬 + 各種加算」で構成されます。基本報酬は「定員規模・人員配置・平均工賃月額の区分」で1日あたりの単位数が決まり、これに地域ごとの単価(おおむね10円〜11円台)と利用延べ人数を掛けて算定します。実際の売上は稼働率(定員に対する利用の埋まり具合)に大きく左右されるため、定員をいかに利用者で満たすかが経営の要になります。

さらに、体制や支援内容を整えることで、次のような加算を上乗せできます。

  • 福祉専門職員配置等加算(有資格者の配置)
  • 目標工賃達成指導員配置加算(工賃向上の専任配置)
  • 就労移行支援体制加算(一般就労への送り出し実績)
  • 送迎加算/食事提供体制加算 など

加算をどれだけ計画的に取りにいけるかで収益は大きく変わります。報酬と加算の詳しい仕組みはこちらの記事をご覧ください。

②事業収入(上乗せ)…保護犬・保護猫の引き取り、トリミング、トレーニング、里親とのマッチング(ペットカフェ)、オリジナルグッズ・フードの製作販売など、利用者の生産活動そのものが生み出す収益です。給付という安定した土台に複数の事業収入を重ねられるのが、このモデルの強みです。そして、これらの仕事が利用者の工賃の原資にもなります。

就労継続支援は利用者が取り組む仕事(生産活動)と、そこから生まれる工賃が事業の核です。研修やカリキュラムは、その仕事を通じて利用者のスキルと成長を後押しするためのもの、という位置づけで考えるとよいでしょう。

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開業までの流れ(目安は約6ヶ月)

就労継続支援B型は、物件の確保・指定申請・人材採用・研修などを経て開所します。準備開始からおおむね6ヶ月程度が目安です。

  1. 情報収集・事業計画…エリアの福祉ニーズや競合状況、収支を整理し、方針と資金計画を固めます。
  2. 法人の設立…指定を受けるには法人格が必要です(株式会社・合同会社・NPO法人など)。
  3. 物件の選定・契約…広さ・部屋・立地などの要件を満たす物件を確保します。
  4. 内装工事・人材採用…指導訓練室や相談室などを整え、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員などを採用します。
  5. 指定申請…自治体へ運営規程や人員・設備の書類を提出し、審査を受けます。
  6. 指定・開所…指定が下りたら開所し、利用者の受け入れを始めます。

特につまずきやすいのが指定申請と人材採用です。具体的な手順や費用の内訳は開業の流れと費用の記事で詳しく解説しています。

開業に必要な「指定基準」(人員・設備)

就労継続支援B型として開業するには、自治体の指定を受ける必要があり、主に次の基準を満たすことが求められます。

  • 人員基準…管理者、サービス管理責任者(一定の実務経験+所定の研修修了が必要)、職業指導員、生活支援員などの配置。職業指導員と生活支援員は利用者数に応じた常勤換算(例:6:1)で必要人数が決まります。
  • 設備基準…作業・訓練のための指導訓練室、相談室、洗面所・トイレなどを備えること。広さの目安は30坪以上とされることが多く、ペットを扱う場合は衛生面や動線への配慮も必要です。
  • 運営基準…運営規程の整備、法人格、消防法・建築基準法など関連法令への適合。

要件の細かな解釈は自治体ごとに差があり、書類も多岐にわたります。経験のある本部や専門家のサポートを受けると、指定申請でつまずくリスクを減らせます。

開業に必要な資金

開業費用は「加盟金」や「物件取得費」だけではありません。内装工事・機材・備品、そして運転資金まで含めて総額で計画することが大切です。代表的な内訳は、物件取得費(保証金など)・内装工事費・機材設備費・備品費・(FCの場合は)加盟金・物販の仕入れ準備、そして運転資金です。

特に見落としがちなのが運転資金です。給付費はサービスを提供してから約45日後に入金されるため、開業直後は手元の資金で人件費や家賃をまかなう必要があります。利用者がまだ少ない立ち上げ期を乗り切るために、数ヶ月分の運転資金を確保しておくと安心です。費用の目安や内訳はこちらの記事で詳しく解説しています。

開業に活用できる助成金・補助金

障がい福祉分野の開業や雇用に関しては、国や自治体の助成金・補助金を活用できる場合があります。たとえば、人材の確保・育成に関する助成(人材開発支援助成金など)、障がいのある方や就職困難者の雇用に関する助成(特定求職者雇用開発助成金など)、自治体ごとの創業・設備投資に関する補助などです。

ただし、制度は年度ごとに内容や要件、予算が変わり、地域によっても大きく異なります。対象になるかどうかは個別の条件によるため、最新の情報は各制度の公募要領・自治体の窓口で必ず確認してください。本部のサポートがある場合は、活用できる制度の情報提供を受けられることもあります。

利用者をどう集めるか

就労継続支援B型は、定員が利用者で埋まってこそ経営が安定します。どんなに良い支援を用意しても、利用者が集まらなければ稼働率は上がりません。集客の主なルートは次のとおりです。

  • 相談支援事業所・医療機関・行政との連携…利用を検討する方は、相談支援専門員を通じて事業所を探すことが多く、関係機関との信頼関係づくりが重要です。
  • 見学会・体験利用…実際の雰囲気を見てもらうことが、利用の決め手になります。
  • ホームページ・SNS…保護犬・保護猫の様子を発信することで、利用者やご家族の関心を引きやすくなります。

「保護犬・保護猫と関われる事業所」という分かりやすい魅力は、他の事業所との差別化になり、集客面でも大きな強みになります。

つまずきやすいポイントと、失敗を避けるには

トリミングなど利用者の仕事のイメージ

開業後につまずきやすいのは、主に次の3点です。

  • 人材の確保…サービス管理責任者など有資格者を確保できないと、指定が下りなかったり開業が遅れたりします。採用と育成の見通しを早めに立てることが大切です。
  • 稼働率(利用者の定着)…利用者が「通い続けたい」と思える支援と、やりがいのある仕事を用意できるかが鍵です。工賃を高める工夫も定着につながります。
  • 資金繰り…立ち上げ期は利用者がまだ少なく、給付の入金も後ろ倒しになります。運転資金の備えが不足すると、黒字化前に資金がショートしかねません。

これらは、支援ノウハウ・研修・集客・資金計画をしっかり準備し、困ったときに相談できる相手を持つことで大きく軽減できます。未経験から始める方ほど、伴走してくれるパートナーの有無が成否を分けます。

フランチャイズで開業するという選択肢

未経験から障がい福祉事業を始める不安は、フランチャイズ(FC)で大きく減らせます。本部の集客支援・人材採用支援・研修・直営事業所でのOJT・開業後の運営サポートを受けられるため、ゼロから手探りで進めるよりも安全に立ち上げられます。

保護犬・保護猫×就労継続支援B型のFC「ONEPET」も、その一つです。トリミングやトレーニングの動画カリキュラムとONEPET独自の認定資格を通じて、利用者が"手に職"をつけられる支援を用意し、希望者はJKC(ジャパンケネルクラブ)の資格取得も目指せます。複数あるFCをどう比べればよいか、選び方のポイントはこちらの記事で解説しています。

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よくある質問

Q. 福祉や動物の専門資格がないと開業できませんか?
A. 事業所として必要な有資格者(サービス管理責任者など)の配置は必要ですが、オーナーご自身が福祉や動物の専門家である必要はありません。本部の研修やサポートを活用しながら運営する方も多くいます。

Q. 工賃はどのくらい支払うものですか?
A. 工賃は事業所の生産活動の収益などをもとに支払われ、金額は事業所によって異なります。国は工賃の向上を推進しており、利用者にやりがいのある仕事を用意し工賃を高めていくことが、事業所の評価にもつながります。

Q. どのくらいの広さが必要ですか?
A. 指導訓練室・相談室などを備えるため、30坪以上が一つの目安です。ペットを扱う動線や衛生面の配慮も必要になります。

Q. 開業までどのくらいかかりますか?
A. 準備開始からおおむね6ヶ月程度が目安です。物件・指定申請・人材採用・研修の進み具合によって前後します。

Q. 本当に続けられる事業ですか?
A. 収入の土台が給付(公費)であるため景気に左右されにくく、社会的意義も大きい事業です。ただし利益や収益は地域・稼働率・運営状況によって変動します。具体的な収支はモデルケースをもとに、ご自身の条件で試算することをおすすめします。

まとめ 想いを、続けられる事業に

保護犬・保護猫×就労継続支援B型は、動物福祉障がい者就労というふたつの社会課題を同時に解決しながら、給付収入を土台に複数の事業収入を重ねられる、社会的意義と継続性を兼ね備えた事業です。開業には指定基準・資金・人材・集客といった準備が必要ですが、流れを理解し、信頼できるパートナーと進めれば、未経験からでも十分に実現できます。「保護活動を、続けられる事業にしたい」「障がいのある方の働く場をつくりたい」——その想いを形にする一歩を、ここから始めてみませんか。

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