eスポーツ就労支援の収益モデル B型事業所の売上と費用の考え方

2026.09.09

eスポーツ特化型の就労継続支援B型について、開業をご検討の方から最も多くいただくご質問が「実際のところ、収益はどう成り立つのか」です。ゲーミングパソコンを何台も並べ、動画編集の環境を整える——設備が目立つ業態だけに、お金の流れが見えにくいのだと思います。

結論を先にお伝えします。収益の決まり方は、eスポーツでも軽作業でも農作業でもまったく同じです。就労継続支援B型の売上は制度で決まった公定価格で成り立っており、業態によって単価が変わることはありません。eスポーツが効くのは「定員をどれだけ埋められるか」という一点だけです。

この記事では、障がい福祉サービスを10年以上運営してきた立場から、eスポーツ型の事業所を例に、売上がどう分解できるのか、費用のどこが重いのか、資金繰りで何につまずくのかを順に整理します。具体的な利益額は事業所ごとの条件で大きく変わるため示しませんが、ご自身で試算できる形にはなるはずです。

eスポーツ特化型の就労継続支援B型で活動する様子

結論 売上は「稼働率 × 報酬区分 × 加算」の3つでしか動かない

就労継続支援B型の基本報酬は、次の形で計算されます。

基本報酬(月額)= 1日あたりの単位数 × 開所日数 × 利用人数 × 地域単価

1単位は原則10円で、地域区分(級地)による上乗せがあります。この式を見ると、売上を動かせる要素が3つしかないことがわかります。

  • 稼働率 定員に対して実際に何人が通っているか。式の「利用人数」にあたります。
  • 報酬区分 1日あたりの単位数。定員・人員配置・前年度の平均工賃月額で決まります。
  • 加算 基本報酬に上乗せされる各種加算。取りこぼしがそのまま機会損失になります。

eスポーツというテーマが直接効くのは、このうち稼働率だけです。ここを正しく理解しているかどうかで、開業後の打ち手がまったく変わります。

▶ FC開業をお考えの方へ:就労支援フランチャイズの開業費用・収益モデル・本部の選び方を体系的にまとめた就労支援フランチャイズとは?完全ガイドもあわせてご覧ください。

① 稼働率 eスポーツの強みは「見学が来る」ことに集中している

開業直後、定員がすぐに埋まることはまずありません。相談支援事業所や医療機関、特別支援学校との関係づくりから始まり、見学、体験、受給者証の申請を経て、ようやく利用開始になります。この立ち上がりに数か月かかることを前提に置いてください。

そのうえで、eスポーツ型の強みははっきりしています。「通いたい」と思ってもらえる理由が、事業所の名前を聞いた時点で伝わることです。軽作業中心の事業所では出会えなかった若い方、外出の機会が減っていた方が、ゲームや動画をきっかけに見学に来てくださる。この入口の広さは、稼働率という数字に確実に効きます。

一方で、落とし穴もあります。見学が集まることと、定着することは別です。「ゲームができる場所」という期待だけで来られた方が、支援計画に沿った活動や工賃につながる作業に戸惑い、足が遠のくことがあります。私たちが直営の運営で学んだのは、見学の段階から「ここは働く力を育てる場所であること」「工賃を生む仕事があること」を率直にお伝えしたほうが、結果的に長く通っていただけるということでした。

eスポーツのプログラムに取り組む就労継続支援B型の利用者

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② 報酬区分 単価を決めるのは「前年度の平均工賃月額」

次に、1日あたりの単位数がどう決まるかです。基本報酬の区分は、①利用定員 ②人員配置 ③前年度の平均工賃月額の3軸で決まります。人員配置は6対1・7.5対1・10対1の3区分があり(6対1は令和6年度改定で新設)、手厚く配置するほど単価は上がりますが、当然ながら人件費も上がります。

ここで押さえていただきたいのは、単価を左右する最大の変数が「平均工賃月額」だということです。そして工賃の原資は給付費ではなく、生産活動の収入です。つまり、外部から対価を得られる仕事をつくれない事業所は、工賃が上がらず、翌年度の報酬区分も上がりません。この構造を理解せずに開業すると、工賃も報酬区分も上がらない悪循環に入ります。工賃の仕組みそのものは工賃とはで詳しく解説しています。

【最新の改定】令和8年度の臨時改定により、令和8年6月分の算定から、基本報酬の区分を決める「平均工賃月額」の基準額が一律3,000円引き上げられ(区分一は月4.5万円以上→4.8万円以上)、区分の間に中間区分A〜Fが新設されました。区分七・八・九の基準は変更されていません。対象となる事業所は区分変更の届出が必要です。最新の告示・自治体の要領を必ずご確認ください。

eスポーツ型で工賃の原資になり得るのは、動画編集の受注、大会・配信イベントの運営受託、サムネイル制作や切り抜き編集といった細分化しやすい制作業務です。ONEGAMEが動画編集のカリキュラムを軸に置いているのは、この領域が最も「仕事」に変換しやすいからにほかなりません。ブランドの全体像はeスポーツで開業する就労継続支援B型 ONEGAMEフランチャイズで整理しています。

③ 加算 助成金を探すより、加算の取りこぼしを防ぐほうが効きます

見落とされがちですが、収益インパクトという点では、加算を漏れなく取ることのほうが、助成金を探すよりはるかに大きいのが実情です。加算は毎月の売上に継続して乗るからです。就労継続支援B型で代表的な加算には、次のようなものがあります。

加算の例概要
初期加算利用開始から一定期間に算定できる加算(30単位/日)。
送迎加算送迎を行った場合に片道ごとに算定(区分により21単位・10単位)。
欠席時対応加算急な欠席時に相談援助等を行った場合(94単位/回・月の回数上限あり)。
福祉専門職員配置等加算有資格者の割合や勤続年数の要件に応じて算定(区分により15・10・6単位/日)。
目標工賃達成加算令和6年度改定で新設された加算(10単位/日)。
目標工賃達成指導員配置加算工賃向上の担当職員を加配した場合に算定。対象となる報酬区分に条件あり。
就労移行支援体制加算一般就労へ移行し、定着した実績に応じて算定。
処遇改善加算職員の処遇改善のための加算。基本報酬に対する加算率で算定し、毎年の申請が必要。

※単位数・要件は報酬改定や自治体の運用で変わります。算定にあたっては必ず最新の告示と自治体の要領をご確認ください。

あわせて、減算の管理も収益に直結します。とくにサービス管理責任者欠如減算は、サビ管が不在になった時点で収入が落ちる仕組みです。人が採れないことが、そのまま売上の減少になる——これが福祉事業の特徴です。

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費用の構造 いちばん重いのは、開所前から発生する人件費

次に費用です。就労継続支援B型の費用構造は、おおむね次のように整理できます。

費目性質と注意点
人件費最大の固定費。利用者がゼロの段階から配置が必要で、開所前の採用・研修期間から発生する。
家賃・光熱費物件の広さは定員に連動。eスポーツ型はパソコンの稼働で電気使用量が増える。
設備・機材パソコン・モニター・周辺機器。開業時の初期費用に加え、数年ごとの更新費が必ず来る。
通信費対戦・配信・動画のやり取りは帯域を使う。安価な回線では支援に支障が出ることがある。
生産活動の経費編集ソフトのライセンス、素材費など。生産活動収入は工賃の原資であり、給付費とは会計上も区別して管理する。
加盟金・ロイヤリティフランチャイズの場合。金額の高低だけでなく、本部が肩代わりする実務の量と合わせて評価する。

eスポーツ型に固有なのは、機材の更新費です。開業時にそろえた環境は数年で世代交代します。「初期費用は見ていたが、更新費を資金計画に入れていなかった」という声は実際に聞きます。開業3〜5年目の更新を、最初から積み立てる前提で計画してください。

就労継続支援B型の収支計画をシミュレーションする資料

資金繰り 黒字でも現金が足りなくなる二重の時間差

収支計画がどれだけ整っていても、開業初期につまずく原因の多くは資金繰りです。理由は2つの時間差が重なるからです。

  • 給付費の入金は約45日後 サービスを提供してから実際に入金されるまで時間差があります。その間も人件費と家賃は毎月出ていきます。
  • 稼働率が上がるまで数か月 開業初月から定員が埋まることはありません。売上が小さい期間にも、費用は満額かかります。

したがって、開業資金は「初期費用+運転資金」で考え、運転資金は最低でも6か月分、可能であれば1年分を確保しておくのが安全です。調達の考え方は障がい福祉サービスの開業資金で、使える制度は助成金・補助金の記事で詳しく扱っています。

「eスポーツなら儲かりますか」というご質問への答え方

私たちは、この問いに「儲かります」とはお答えしません。障がい福祉サービスは公費を原資とする制度事業であり、収益を断定的に保証できる事業ではないからです。「必ず儲かる」「開業すれば年収◯◯万円」といった説明は、景品表示法や特定商取引法の観点からも適切とはいえません。

そのうえで、事実としてお伝えできることはあります。収益は稼働率・報酬区分・加算という3つの管理可能な変数で決まり、そのどれもが日々の運営の積み重ねで動く、ということです。逆にいえば、運営が甘ければどんな業態でも成り立ちません。就労継続支援B型のフランチャイズは儲かる?では、この点をB型全般の視点で整理しています。

収益を安定させる5つの実務

  1. 生産活動を先に決める…工賃の原資になる仕事の入口(動画編集の受注先やイベント案件)を、設備投資より先に設計します。ここが翌年度の報酬区分を決めます。
  2. 見学の質を上げる…「ゲームができる場所」ではなく「働く力を育てる場所」として伝えます。期待値をそろえるほど定着率が上がります。
  3. 加算の棚卸しを毎月行う…算定できるのに取っていない加算がないか、要件を満たさなくなった加算がないかを月次で確認します。
  4. 人員配置を段階的に上げる…稼働率の伸びに合わせて10対1から7.5対1、6対1へ。先に人件費だけ膨らませないことが要点です。
  5. 資金繰り表を毎月更新する…損益だけでなく現金の動きを見ます。給付費の入金サイクルを織り込んだ現金残高の予測が、判断を早くします。
毎月の加算と資金繰りをチェックする運営の実務

フランチャイズ本部を「収益面」で見極めるには

加盟を検討する際、ロイヤリティの金額だけで比較するのは危険です。見るべきは、本部が収益の3変数にどう関与してくれるかです。

  • 稼働率 集客の導線、見学対応の型、地域の関係機関への説明資料まで用意があるか。
  • 報酬区分 工賃を生む生産活動が事業モデルに組み込まれているか。受注の仕組みまであるか。
  • 加算 加算の算定や運営指導への対応を支援できるか。直営の運営実績があるか。

この3点に具体的に答えられる本部であれば、ロイヤリティは「見えないコスト(学習時間・採用の失敗・稼働率の立ち上がり遅れ・加算の取りこぼし)」を減らす対価として評価できます。判断軸の整理は独立開業とフランチャイズの比較を、つまずきの類型は就労支援フランチャイズの失敗事例をご覧ください。

よくあるご質問

Q. eスポーツ型は、他の業態より収益が高いのですか。

A. 制度上、業態による単価の違いはありません。差が出るのは稼働率・報酬区分・加算の3点だけです。eスポーツが有利に働くとすれば、それは稼働率を通じてです。

Q. 利用者が集まれば、それだけで黒字になりますか。

A. 稼働率は最も大きな要素ですが、それだけでは足りません。工賃が上がらなければ翌年度の報酬区分が上がらず、加算を取りこぼせば同じ利用者数でも収入が変わります。

Q. 生産活動の売上は、事業所の利益になりますか。

A. 生産活動収入は、必要経費を差し引いたうえで工賃として利用者へ支払う原資です。事業所の運営費は給付費でまかなう、という二階建ての構造を前提に計画してください。

Q. 機材はどこまでそろえるべきですか。

A. 定員と提供するプログラムによって変わります。開業時に上限までそろえるより、更新費を見込んで段階的に整える方が資金繰りは安定します。

Q. 開業してから黒字化まで、どのくらいを見ておくべきですか。

A. 立ち上がりの速度は地域性や関係機関との関係づくりに左右されるため、一律には申し上げられません。だからこそ、運転資金を厚めに用意し、稼働率が想定より遅れても耐えられる計画にしておくことが重要です。

Q. 収支のシミュレーションは相談できますか。

A. はい。定員、地域区分、人員配置の前提を置いたうえで、一緒に試算します。前提の置き方そのものが最も重要ですので、資料請求またはオンライン説明会でお気軽にご相談ください。

まとめ

eスポーツ特化型の就労継続支援B型の収益は、稼働率・報酬区分・加算という3つの変数で決まります。eスポーツはそのうち稼働率に効く強力な入口ですが、収益そのものをつくるのは、工賃を生む生産活動の設計と、加算・人員配置を含む日々の運営です。

数字の見通しは、定員・地域区分・人員配置といった前提で大きく変わります。一般論の試算表を眺めるより、ご希望のエリアと規模を前提に一緒に計算したほうが、はるかに実態に近づきます。まずはご相談ください。

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