アニマルセラピーの効果とは? 科学的根拠と医療・福祉での活用を解説

2026.07.13

犬や猫とふれあうと、なんだか心がほどけて、ほっとする——そんな経験はありませんか。この「動物の力」を、医療・福祉・教育の現場で役立てようとする取り組みがアニマルセラピーです。この記事では、アニマルセラピーの効果と科学的な根拠、活用の場、そして注意点までを、障がい福祉サービスを10年以上運営してきた立場から、誇張せず正確に解説します。

アニマルセラピーとは?──実は3つの種類がある

「アニマルセラピー」は日本で広まった呼び方(和製英語)で、専門的には「動物介在介入」と呼ばれ、目的によって次の3つに分けられます。

動物介在療法(AAT) 医師や作業療法士など専門家が、明確な治療目標を立てて行う医療的なアプローチ。リハビリや精神科領域などで用いられます。
動物介在活動(AAA) 福祉施設や介護施設などでの、ふれあい・交流による癒やしの活動。生活の質(QOL)向上やレクリエーションが目的です。
動物介在教育(AAE) 学校などの教育現場で、命の大切さを学んだり、社会性や思いやりを育んだりする取り組みです。

同じ「動物とのふれあい」でも、誰が・何のために行うかで位置づけが違います。この記事で多くの人がイメージするのは、主にAAA(動物介在活動)です。

猫とふれあい心が和らぐアニマルセラピーのイメージ

科学的に確かめられてきた効果

動物とのふれあいがもたらす変化は、少しずつ研究でも裏づけられてきています。代表的なものを、心・体・人とのつながりの3つの面から整理します。

体(生理面) ふれあいの後に血圧が平均5〜10mmHg下がったという報告や、脳のα波(リラックス時に出る波)の増加、ストレスホルモン(コルチゾール)の減少などが確認されています。
心(心理面) 「楽しい」「安心する」という感情に関わるオキシトシンやドーパミンの分泌が増え、不安や気分の落ち込みがやわらぐことが期待されます。睡眠の質の向上を感じる人もいます。
人とのつながり(社会面) あまり人と話さなかった高齢者が、動物を介して自然と会話が増えるなど、人と人との交流のきっかけになります。

ポイントは、動物が「会話のきっかけ」「安心の入り口」になることです。直接の治療というより、人が前向きになり、関わりが生まれる土台を作ってくれる——そこにアニマルセラピーの価値があります。

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アニマルセラピーの歴史

動物が人の心を癒やすことは古くから知られていました。看護の祖ナイチンゲールも、著書のなかで小動物が病人の慰めになると記しています。転機は1960年代。アメリカの児童心理学者ボーリス・レビンソンが、診察に同席させた愛犬のおかげで、心を閉ざしていた子どもが自然に話し始めたことに気づき、「ペットセラピー」を提唱しました。

その後、欧米で医療・福祉・教育の現場へと広がり、日本でも1990年代以降、主に高齢者介護の現場を中心に「アニマルセラピー」として普及してきました。

なぜ動物とふれあうと癒やされるのか

「なんとなく落ち着く」には、いくつかの理由が考えられています。

オキシトシンが分泌される 動物とふれあうと、安心や信頼に関わる「オキシトシン(愛情ホルモン)」が分泌され、緊張がやわらぎます。人と動物の双方で分泌が増えるという報告もあります。
自律神経が整う やさしく動物にふれることで、心身をリラックスさせる副交感神経が優位になり、血圧や心拍が落ち着きやすくなります。
「無条件に受け入れられる」感覚 動物は評価や否定をしません。ありのままを受けとめてくれる存在が、安心感と自己肯定につながります。
「今ここ」に集中できる 動物の体温やぬくもりに意識が向くことで、不安な考えから離れ、心が穏やかになります。

どんな場面で活かされている?

高齢者・認知症ケア 施設でのふれあいが、表情を明るくし、発語や意欲を引き出すきっかけになります。
医療・リハビリ 入院中の不安の軽減や、リハビリへの意欲向上を支える補助的なアプローチとして。
障がい福祉 動物と関わることが、安心できる居場所づくりや、コミュニケーションの練習の場になります。
教育・子どもの育ち 命とふれあう体験を通じて、思いやりや責任感、命を大切にする心を育みます。

知っておきたい注意点と限界

効果が期待される一方で、誠実にお伝えすべき点もあります。

「治る」と断定はできない 研究は進んでいますが、効果には個人差があり、医療の代わりになるものではありません。あくまで心身を支える補助的な取り組みです。
動物福祉への配慮 癒やすのは動物です。動物に無理をさせない頭数・時間・環境の管理(動物の健康と幸せ)が大前提になります。
衛生・安全・アレルギー 感染症対策や、咬傷・アレルギーへの配慮、相性の見極めが欠かせません。

「動物にも人にも無理がない」形で行われてこそ、本来の力を発揮します。

施設や家庭で取り入れるには

取り入れ方にはいくつかの形があります。無理のない範囲で、動物にも人にも負担の少ない方法を選ぶことが大切です。

専門団体に依頼する セラピー犬とハンドラー(飼い主・指導者)を施設に派遣してもらう方法。認定を受けたセラピー犬が中心で、安全管理も任せられます。
施設で動物を迎える 施設犬・施設猫として迎える方法。日常的にふれあえる一方、世話の体制づくりと動物福祉への責任が伴います。
家庭でペットと暮らす 飼うこと自体に癒やしや生活リズムの効果があります。ただし終生飼養の責任を前提に、迎える前に十分検討しましょう。

「癒やされる」から「ケアする」へ──就労支援という新しい形

ここまでは、人が動物に「癒やされる」視点でした。いま注目されているのは、その一歩先——障がいのある方が動物を「ケアする側」に立つという形です。

保護犬・保護猫の世話やトリミング、里親とのマッチングを就労継続支援B型の仕事として行うと、利用者さんにとって動物は「癒やしの対象」であると同時に「自分が役割を担う相手」になります。命と向き合い、必要とされる実感は、自己肯定感ややりがいにつながります。これは、ふれあうだけのアニマルセラピーにはない、もう一段深い動物の力です。

「動物に救われ、動物を救う」。この循環をつくるのが、ONEPETの「就労支援×動物愛護」のモデルです(くわしくはカリキュラムの記事保護犬猫の現状もご覧ください)。

利用者が動物をケアし役割を担うイメージ

よくある質問(FAQ)

アニマルセラピーで病気は治りますか?

治療そのものではなく、心身を支える補助的な取り組みです。効果には個人差があり、医療の代わりにはなりません。

どんな動物が使われますか?

犬や猫のほか、馬(ホースセラピー)、うさぎ、小動物などさまざまです。目的や相手に合わせて選ばれます。

高齢の家族にも効果はありますか?

表情が明るくなる、会話が増えるなどの変化が期待されます。ただし衛生・安全・アレルギーへの配慮は必要です。

障がいのある人にとってのメリットは?

安心できる居場所やコミュニケーションの練習の場になります。さらに動物を「ケアする側」に立つことで、役割ややりがいも生まれます。

まとめ

アニマルセラピーには、血圧やストレスの軽減、オキシトシンの分泌、人との交流促進といった効果が期待されます。ただし「治る」と断定はできず、動物福祉や衛生への配慮が前提です。

そして、障がいのある方が動物を「ケアする側」に立つ就労支援は、動物の力を社会の課題解決につなげる新しい形です。「就労支援×動物愛護」に関心のある方は、ぜひ一度資料をご覧ください。

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この記事の監修者
市村 均弥(いちむら きんや)
株式会社ワンライフ 代表取締役

「障がいのカタチを変える」を掲げ、障がい福祉のフランチャイズを全国に展開。福祉と多様な産業(保護犬・保護猫、eスポーツ、農業など)を掛け合わせた事業モデルで、障がいのある方の“働く選択肢”を広げている。

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