就労支援フランチャイズの人員基準
管理者・サビ管・支援員の配置を解説

2026.07.23

就労継続支援A型・B型や児童発達支援などの障がい福祉サービスをフランチャイズで開業するとき、物件や資金と並んで避けて通れないのが「人員基準」です。人員基準とは、事業所ごとに配置しなければならない職種・人数と、その資格要件を定めた指定基準のこと。これを満たせなければ、そもそも指定(開業の許可)が下りず、開業後に欠けても報酬の減算や指定の取消につながります。

障がい福祉サービスを10年以上運営してきた実績から言えるのは、人員基準は「開業のゴール」ではなく「開業後もずっと続く、最大の固定費であり最大のボトルネック」だということ。とりわけサービス管理責任者(サビ管)の確保は、多くの開業者がつまずく最初の壁です。

この記事では就労継続支援B型を軸に、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員の配置数と資格要件、6:1・7.5:1・10:1で変わる基本報酬、A型や児童発達支援との違い、そして人員を確保しきれなかったときのリスクと対策までを、運営者目線で解説します。

就労支援フランチャイズのサービス管理責任者が利用者と面談する様子

人員基準とは なぜ開業前に最重要なのか

障がい福祉サービスは、都道府県・市町村から「指定」を受けて初めて報酬(給付費)を請求できます。その指定の可否を左右する柱のひとつが人員基準です。設備基準・運営基準と並ぶ「指定の三本柱」であり、職種ごとに必要な人数と資格が満たせていなければ、申請しても指定は下りません。

そして人員基準は、開業時に一度満たせば終わりではありません。開業後に職員が欠けた状態が続けば、報酬の減算(サービス管理責任者欠如減算など)や、最悪の場合は指定の取消・報酬返還の対象になります。実地指導・監査で必ず確認される項目です。

加えて、福祉サービスの収益の土台は基本報酬+各種加算という公費(給付費)で、その入金はサービス提供の約45日後です。人件費は毎月先に出ていくため、人員基準は「開業の要件」であると同時に、運転資金と損益を大きく左右する最大の固定費でもあります。だからこそ、人員設計は開業前に最優先で詰めておく必要があります。

就労継続支援B型の人員基準(配置と人数)

就労継続支援B型で配置が必要な職種と基準は、おおむね次のとおりです(定員20人以下・標準の区分を想定)。

職種配置基準補足
管理者1名原則専従。支障がない範囲で他の職務やサビ管との兼務が認められる場合あり
サービス管理責任者利用者おおむね60人に1人以上1名以上を必ず配置(不在は基準違反)
職業指導員1名以上職業指導員と生活支援員の合計で常勤換算6:1・7.5:1・10:1のいずれか(10:1が最低基準)
生活支援員1名以上同上(配置区分は6:1/7.5:1/10:1から選ぶ)

ポイントは、職業指導員と生活支援員を「それぞれ1名以上」置いたうえで、2職種の合計を常勤換算で見る点です(各職種を別々に数えるのではありません)。配置は6:1・7.5:1・10:1の3区分から選び、6:1がもっとも手厚く基本報酬の単価も高く、10:1が最低ラインです。どの区分で運営するかは、支援の質と報酬・人件費を左右する経営判断そのものです。

サービス管理責任者(サビ管)の要件と「最大の壁」

サビ管は、個別支援計画の作成やサービスの質の管理を担う要の職種で、すべての障がい福祉サービス事業所に配置が義務づけられています。不在の期間はサービス管理責任者欠如減算の対象となり、報酬が大きく下がります。開業者が最もつまずくのが、このサビ管の確保です。

サビ管になるには、実務経験・研修・OJTを段階的に満たす必要があります。国家試験ではなく、経歴を積み上げていく仕組みです。

就労支援の現場で職業指導員・生活支援員が利用者を支援する様子
  1. 実務経験を積む…相談支援業務や直接支援業務などの実務経験が必要。経歴により概ね3〜8年(例:相談支援5年、直接支援8年など。保有資格により短縮される場合あり)。
  2. サビ管基礎研修を受講…受講には事業所からの推薦が必要。ここが計画的に動けていないと開業に間に合わない。
  3. 2年間のOJT…基礎研修の後、サビ管配置に向けた実務経験(OJT)を積む期間が設けられている。
  4. 実践研修を修了…実践研修を修了して、正式にサービス管理責任者として配置できるようになる。
  5. 5年ごとに更新研修…資格の維持には5年ごとの更新研修が必要。継続的な受講計画も要る。

有資格者は慢性的に不足しており、採用競争も激しいのが実情です。開業時にサビ管を確保できず、開業そのものが延期になるケースは珍しくありません。だからこそ、物件探しや資金計画より先に、サビ管の当てを付けておくことが重要です。

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職業指導員・生活支援員の配置 6:1・7.5:1・10:1で報酬が変わる

職業指導員は作業や生産活動の指導を、生活支援員は日常生活面の支援を主に担います。この2職種は合計で常勤換算10:1(利用者10人に対して常勤1人)が標準の配置です。常勤換算とは、パート職員の勤務時間を常勤職員の所定労働時間で割って合算する考え方で、常勤・非常勤を組み合わせて基準を満たします。

ここで収益に効いてくるのが7.5:1・6:1の区分です。利用者7.5人/6人に常勤1人という、より手厚い配置にすると基本報酬の単価が上がります。とくに令和6年度(2024年度)の報酬改定で新設された6:1がもっとも高い単価(就労継続支援B型サービス費(I))です。なお、この6:1は基本報酬の人員配置区分の話で、同じく6:1が要件になる「目標工賃達成指導員配置加算」とは別のものです。人件費は増えますが、支援の密度が上がり、工賃や稼働率の向上を通じて報酬にも返ってきます。「基準を満たす最低ライン」で組むか、「支援の質と報酬」を取りにいくかは、経営判断の分かれ目です。

就労継続支援A型の人員基準との違い

就労継続支援A型も、管理者1名・サビ管60:1・職業指導員+生活支援員の合計10:1という基本的な枠組みはB型と同じです。違いは人員そのものより、A型が雇用契約(最低賃金以上・労働基準法や社会保険が適用)である点にあります。

A型は報酬がスコア方式(規模・職員配置・就職実績・賃金水準などを点数化)で決まり、生産活動の収入で利用者の賃金を賄う「収支率要件」が課されます。2017年に相次いだA型の大量解雇問題(2018年度に約2,272人が解雇)を受けて基準が厳格化され、「直近の会計年度が赤字だと新規指定を受けにくい」「給付費を賃金に充てることは禁止」といったルールが加わりました。人員設計とあわせて、事業計画の作り込みが問われます。

児童発達支援・放課後等デイの人員基準(児発管)

児童発達支援・放課後等デイサービスでは、サビ管に相当する職種が児童発達支援管理責任者(児発管)です。加えて児童指導員・保育士などの配置が求められ、就労支援とは職種名も配置数も変わります。

2024年の報酬改定では支援プログラムの公表が義務化され、未公表は減算の対象になりました。「どのサービス種別で開業するか」によって、必要な人員設計そのものが変わるということです。フランチャイズのブランドを選ぶ段階から、種別ごとの人員基準を踏まえて検討する必要があります。

人員基準を満たせないと何が起きるか

人員基準は開業後も守り続けるものです。満たせなくなると、主に次のような不利益が生じます。

  • サービス管理責任者欠如減算:サビ管が不在になると、不在の翌々月から基本報酬が30%減算され、欠如が5か月以上続くと50%減算に拡大します。
  • 定員・人員の欠員が続く場合の指定取消・報酬返還:改善が見られないと、指定の取消や、過去に受け取った報酬の返還を求められるリスクがあります。
  • 実地指導・監査での指摘:勤務実態や常勤換算の記録は必ず確認されます。書類上だけ整えても、実態が伴わなければ問題になります。

人員基準は「開業できたかどうか」だけでなく、開業後の経営の安定に直結する、いわば事業の生命線です。

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開業前に押さえる人員確保の実務 フランチャイズ本部の支援

人員をそろえるうえで押さえておきたい実務ポイントを整理します。

まず、採用はサビ管を核に設計します。サビ管の当てが付いてから、職業指導員・生活支援員をどう組み合わせて常勤換算6:1・7.5:1・10:1のいずれかを満たすかを、勤務シフトまで落とし込みます。開業直後の欠員リスクも見込んで、少し余裕を持った体制を組むのが安全です。

次に、立地も忘れてはいけません。生活介護・就労A/B・児発・放デイなどは総量規制の対象で、都道府県が計画上の必要量を超えると新規指定を拒否できます。2024年4月には市町村意見申出制度も創設され、市町村が指定に意見を付けられるようになりました。人をそろえても、地域によっては指定されないことがあります。

さらに、2025年10月に施行された就労選択支援により、利用者がB型などを利用する前に就労能力・適性を客観的に評価する入口が整いました。支援体制や連携の見直しも視野に入ります。こうした制度対応や採用・研修、サビ管候補の育成支援まで、開業前後を伴走してくれる点は、フランチャイズ本部を活用する大きな価値です。

【運営者目線】人員基準で失敗しない3つのポイント

  1. サビ管確保を最優先で動く…物件や資金より先に、サビ管の当てを付ける。有資格者は不足しがちで、確保に時間がかかると開業スケジュールに影響しやすい。
  2. 常勤換算とシフトを開業前に設計…常勤・非常勤を組み合わせて6:1・7.5:1・10:1のいずれかをどう満たすかを、勤務シフトと欠員リスクまで含めて事前に固める。
  3. 報酬区分と人件費の損益分岐を試算…7.5:1・6:1などの手厚い配置は報酬が上がる一方で人件費も増える。どの区分が自事業所の採算に合うかを数字で確認する。

よくある質問(FAQ)

Q. サービス管理責任者がいなくても開業できますか?
できません。サビ管はすべての事業所に必置で、不在では指定を受けられず、開業後の不在も減算の対象になります。

Q. 管理者はサビ管や支援員と兼務できますか?
管理者はサビ管や職業指導員・生活支援員と兼務できるのが一般的です(管理業務に支障がない範囲。ただし管理業務が過度に多忙で支援に支障が出る場合や、一部の自治体では制限されることもあります)。

Q. 職業指導員と生活支援員は何が違いますか?
職業指導員は作業・生産活動の指導、生活支援員は日常生活面の支援が主な役割です。配置は2職種の合計を常勤換算で見て、6:1・7.5:1・10:1のいずれかの区分で組みます(10:1が最低基準)。

Q. 人員基準は開業後も守り続ける必要がありますか?
はい。開業後に欠員が続くと減算や指定取消のリスクがあります。実地指導・監査でも勤務実態が確認されます。

Q. 未経験でも支援員として採用できますか?
職業指導員・生活支援員は資格が必須ではなく、未経験からの採用も可能です(サビ管には実務経験・研修などの要件があります)。

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この記事の監修者
市村 均弥(いちむら きんや)
株式会社ワンライフ 代表取締役

「障がいのカタチを変える」を掲げ、障がい福祉のフランチャイズを全国に展開。福祉と多様な産業(保護犬・保護猫、eスポーツ、農業など)を掛け合わせた事業モデルで、障がいのある方の“働く選択肢”を広げている。

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