犬・猫の殺処分の現状 数字で見る保護犬・保護猫と私たちにできること

2026.07.11

「保護犬・保護猫」という言葉を耳にする機会が増えました。一方で、犬や猫の殺処分がいまどうなっているのか、正確に知る人は多くありません。この記事では、環境省の最新データをもとに、保護犬・保護猫と殺処分の現状、そこに至る背景、そして私たち一人ひとりにできることを、障がい福祉サービスを10年以上運営してきた立場から分かりやすく解説します。

結論──殺処分は大きく減ったが、ゼロではない

まず全体像から。日本の犬・猫の殺処分数は、この20年で劇的に減少しました。2004年度には約39万頭が殺処分されていましたが、令和5年度(2023年度)は9,017頭まで減っています。多くの人の努力で「殺処分ゼロ」に近づいてきたのは事実です。

しかし、まだ年間9千頭以上の命が失われているのも現実です。「減った」ことに安心せず、最後の一頭まで救うために何ができるかが問われています。

数字で見る犬・猫の殺処分の現状(令和5年度)

環境省の統計から、最新の状況を整理します。

項目頭数
殺処分数(合計)9,017頭(前年比 約24%減)
うち犬2,118頭
うち猫6,899頭
20年前(2004年度)約39万頭 → 現在は約40分の1以下

ポイントは、殺処分される命の多くが猫だということです。とくに、まだ自分で生きられない子猫(幼齢猫)の割合が高いのが特徴です。

保護施設で新しい家族を待つ犬・猫のイメージ

なぜ猫のほうが多いの?

繁殖力の高さ 猫は年に複数回出産し、一度に複数の子を産みます。不妊・去勢が行われないと、屋外で爆発的に数が増えてしまいます。
屋外の野良猫・幼齢猫 行き場のない子猫が保護されるケースが多く、ミルクが必要な月齢では育てる手が足りず、命をつなぐのが難しい場合があります。
地域での管理の難しさ 飼い主のいない猫(地域猫)への対応は地域ごとに差があり、対策が追いつかない地域もあります。

そもそも、なぜ犬・猫は保護されるのか

保護犬・保護猫が生まれてしまう背景には、いくつかの共通した要因があります。

飼育放棄・終生飼養の断念 「世話ができなくなった」「思っていたより手がかかる」などの理由で手放されるケース。
多頭飼育崩壊 不妊・去勢をしないまま増えすぎ、飼い主が世話しきれなくなる問題。近年とくに増えています。
高齢化・入院・経済的事情 飼い主の高齢化や病気、生活の変化で飼えなくなるケース。
安易な購入と無計画な繁殖 「かわいいから」と十分な準備なく迎えてしまうことも一因です。

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殺処分が減ってきた理由

20年で殺処分が激減したのは、多くの取り組みの積み重ねによるものです。

引取りの適正化 自治体が安易な引取りを行わず、飼い主に終生飼養の責任を促すようになりました。
譲渡(里親探し)の推進 動物愛護センターや保護団体、ボランティアが連携し、新しい家族につなぐ取り組みが広がりました。
不妊・去勢とTNR 地域猫を捕獲し不妊手術をして元に戻す「TNR」などで、不幸な命が生まれない取り組みが進みました。
社会の意識の変化 「ペットは家族」「買うより、保護犬・保護猫を迎える」という考え方が広がってきました。
保護猫とふれあい新しい家族を考える人のイメージ

まだ残されている課題

数字が改善しても、現場には難しい課題が残っています。高齢や病気を抱えた犬・猫は新しい家族が見つかりにくく、幼齢猫の保護には手間と費用がかかります。譲渡を担うボランティアや団体の負担も大きく、「譲渡の受け皿」をどう増やし、支えていくかが次のテーマです。

私たちにできること

迎えるときは「終生飼養」を前提に 最後まで責任を持って飼えるか、家族で十分に話し合ってから迎えましょう。
不妊・去勢を行う 望まない繁殖を防ぐことが、不幸な命を減らす最も確実な方法のひとつです。
「保護犬・保護猫を迎える」選択 迎える前に、保護施設や譲渡会をのぞいてみる。それだけでも救われる命があります。
寄付・ボランティアで支える 直接飼えなくても、保護活動を支える形で関わることができます。

引き取られた犬・猫はどうなる?──返還・譲渡の今

自治体に引き取られたり保護されたりした犬・猫は、すべてが殺処分されるわけではありません。近年は、飼い主のもとへ戻す「返還」や、新しい家族に迎えてもらう「譲渡」が大きく進みました。動物愛護センターや保護団体、譲渡ボランティアが連携して里親を探す取り組みが各地に広がり、譲渡率は年々向上しています。

その結果、20年前に約39万頭だった殺処分は、令和5年度には9,017頭まで減少しました。「行政が処分する」時代から「みんなで生かす」時代へ、確実に変わってきています。

法律の進化が、不幸な命を減らしてきた

殺処分が減った背景には、現場の努力に加えて、法律(動物愛護管理法)の改正があります。2019年に改正され、2021〜2022年にかけて段階的に施行された主な内容です。

8週齢規制(2021年6月〜) 生後56日を経過しない子犬・子猫の販売を禁止。早すぎる親離れによる噛み癖などの問題行動を防ぎ、安易な販売に歯止めをかけました(天然記念物指定犬は49日の特例)。
数値規制(2021年6月〜) 繁殖・販売業者に対し、従業員1人あたりの飼育頭数の上限(例:繁殖犬15頭・繁殖猫25頭)やケージの広さなどの具体的な基準を導入。劣悪な多頭飼育・繁殖を抑える狙いです。
マイクロチップ義務化(2022年6月〜) 販売業者に犬・猫へのマイクロチップ装着と情報登録を義務化。迷子や遺棄を減らし、飼い主の責任を明確にします。

こうしたルールの整備が、「売られる命」「捨てられる命」を入口で減らすことにつながっています。

増える「多頭飼育崩壊」と福祉の課題

いま、保護の現場で深刻化しているのが多頭飼育崩壊です。不妊・去勢をしないまま飼い猫・飼い犬が増えすぎ、飼い主が世話しきれなくなって崩壊するケースで、一度に数十頭が保護されることもあります。

注目すべきは、その背景に飼い主自身の生活課題が潜んでいることです。高齢化、ひとり暮らし、経済的な困窮、こころの不調やセルフネグレクト——いわゆる「8050問題」とも重なります。つまり多頭飼育崩壊は、動物の問題であると同時に人の福祉の問題でもあるのです。

だからこそ、動物愛護の関係者と、地域の福祉・見守りの関係者が連携して対応することが欠かせません。動物を救うことと、人を支えることは、地続きの課題です。障がい福祉を長年運営してきた私たちも、この視点を大切にしています。

「殺処分ゼロ」と地域差

殺処分数には大きな地域差があります。譲渡の仕組みづくりや行政・団体の連携が進んだ自治体では「殺処分ゼロ」に近づく一方、取り組みが追いつかない地域も残ります。数字を全国平均で見るだけでなく、それぞれの地域で「次の一頭」をどう生かすかが問われています。

「就労支援 × 動物愛護」という解決の形

譲渡の受け皿を増やすうえで、いま注目されているのが「福祉」との連携です。保護した犬・猫のケアや里親マッチングを、障がいのある方の就労継続支援B型の仕事として行う取り組みが広がっています。

「行き場を失う犬・猫」と「障がいのある方の働く場」という2つの課題を同時に解決できるのが、この仕組みの大きな魅力です。利用者さんにとっては命と向き合うやりがいのある仕事になり、犬・猫には新しい家族と出会う機会が生まれます(詳しくは保護団体連携の仕組み)。

よくある質問(FAQ)

日本の犬・猫の殺処分は今どのくらいですか?

令和5年度(2023年度)は9,017頭で、20年前の約39万頭から大幅に減少しています。ただしゼロではありません。

なぜ猫の殺処分が多いのですか?

繁殖力が高く、屋外で増えやすいことや、保護される幼齢猫(子猫)が多いことが主な理由です。不妊・去勢が重要です。

保護犬・保護猫はどうすれば迎えられますか?

動物愛護センターや保護団体の譲渡会などで迎えられます。譲渡には条件や審査、トライアル期間がある場合があります。

直接飼えなくても力になれますか?

はい。寄付やボランティア、SNSでの情報拡散など、保護活動を支える関わり方があります。

まとめ

日本の犬・猫の殺処分は、令和5年度で9,017頭。20年で約40分の1以下に減りましたが、まだゼロではありません。多くは猫、とくに子猫です。終生飼養・不妊去勢・保護犬猫を迎える選択など、一人ひとりの行動が次の一頭を救います。

そして、保護犬・保護猫のケアを障がいのある方の就労支援とつなぐ「福祉×動物愛護」の取り組みも、解決の有力な形のひとつです。関心のある方は、ぜひ一度資料をご覧ください。

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この記事の監修者
市村 均弥(いちむら きんや)
株式会社ワンライフ 代表取締役

「障がいのカタチを変える」を掲げ、障がい福祉のフランチャイズを全国に展開。福祉と多様な産業(保護犬・保護猫、eスポーツ、農業など)を掛け合わせた事業モデルで、障がいのある方の“働く選択肢”を広げている。

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